世界フェアトレード・デー2008 フェアトレードと環境
ネパールのフェアトレード団体は、現状の問題にどのように取り組んでいるのでしょうか?
グローバル・ヴィレッジ/ピープル・ツリー代表のサフィア・ミニーが、ネパールのフェアトレード団体のメンバーと意見交換を行いました(2008年2月)。
フェアトレードを広めるために活動している人びとの間では、次のような議論がされてきました。「南」の国々で手工芸品を生産しているフェアトレード団体にとって、環境問題や高くなっていく環境基準に対応していくことは、彼らが国際貿易に参加していく際のさらなる障壁となるだろう、と。それでも私には、今こそフェアトレードで広く使われている環境負荷の低い生産方法が認められ、売上や社会的影響力を上げていく絶好のチャンスだと思われるのです。フェアトレードで扱う手工芸品はほとんどが手作りで、石油による動力より人の手仕事が生産の中心になっています。もっとも、小規模のテクノロジーはフェアトレードの生産でも使われていますが。
また、フェアトレードの手工芸品は、ほとんどは現地で調達できる自然原料を使い、より多くの生産者の生計を支えられるよう、最大限の生産が行われていることで、その「付加価値」を最大限に高めています。つまり、大量生産ではなく、大衆による生産を優先しているのです。おおざっぱに言えば、地球からの搾取をおさえて、より多くの人びとの生活を支えることができるのです。
気候変動に対して、ようやく政治家や大企業も目覚め始めました。しかし、CO2排出権取引市場で大規模な石油会社や貿易会社が不当な利益を得ている一方、1000万人の手織り職人たちがCO2排出を年間1トンも削減していることに対し、年間30ドルの見返りを要求できる日は来るのでしょうか?同様に、オーガニック農法の生産者が、耕地1ヘクタールあたり年間2トンのCO2を土壌に還元していることに対して、年間60ドルの報酬を請求できるようになるのはいつでしょう?
(参照:ローデイル研究所: Rodale Institute http://www.newfarm.org).
「北」の国に住む人たちと比べ、不利な立場にある「南」の国の人たちを支援し、その組織強化をはかること、また北においては環境負荷の低い供給ルートの開発が、緊急に求められています。それはまた、この世界のありかたを変革していく手だてを創造することになり、フェアトレードによる暮らしが環境にやさしいという認識を広めていくことにもつながります。
そこで、ネパールのフェアトレード団体が、力をつけていくきっかけとなっている取り組みをいくつかご紹介します。
「ニュー・サドル」は、農村で織物や手工芸品を生産している何百人もの生産者を支援するとともに、ハンセン病患者の医療支援もしている団体です。チトラさんは、ニュー・サドルでソープナッツを販売してきました。ソープナッツはネパール、インドで伝統的に使われ、環境にもやさしい粉石けんとして衣類の洗濯に利用されてきたものです。ニュー・サドルは現在このソープナッツを輸出し、世界中のフェアトレード団体を通して販売しています。これまでのチトラさんの取引先の人びとは、チトラさんと団体、ニュー・サドルを信用して取引関係を築いてきました。しかし、最近の環境問題への関心の高まりにより、ソープナッツ製品がメインストリームの市場で扱われるにつれて、取引先からは製品がオーガニック認証をされているのかということをはじめ、製品に関する情報を求める問い合わせが増えました。こうした情報を提供するには、高い費用をかけて商品テストを行い、オーガニック認証を取得しなくてはなりません。「そうした理由から、」とチトラさんは説明を続けます。「私たちは、ネパールのオーガニック認証組織を登録しました。IFOAM(国際有機農業運動連盟)と提携する組織です。こうすることによって、地元の検査官によるオーガニック商品の認証が可能になります。海外から検査官を招聘する費用がかからずにすみますから、小規模の生産者でも認証を取得しやすくなるのです。またこれとは別に、オーガニック認証のために、ハチミツのテスト機械を購入し、ネパール国内の何万人もの養蜂農家たちの市場を守ることに取り組んでいます。現在、ネパールにハチミツのテスト機械がないために、養蜂農家はインドに安くハチミツを販売する以外になく、不利益をこうむっています。インドは、ネパールから安く仕入れたハチミツをオーガニック認証をするテスト機械で認証し、ラベルを貼り変え、オーガニック認証済み製品と付加価値をつけて海外へ輸出しているのです。現在、とてもたくさんの人びとが、環境にやさしい製品を求めています。2008年は、環境にやさしい製品とリサイクル原材料を利用した製品の年になりそうです。私たちの例では、麺の包装袋をリサイクルし、製品を作り出すする技術を利用したいとチャレンジしています。
「ゲット・ペーパー」 ミランさん
www.gpinepal.com
「ゲット・ペーパー」は、廃棄物をリサイクルして手仕事で紙製品を生産しています。私たちの使う原料のほとんどは廃棄物で、衣料品工場で出た布くずなどを利用しています。紙を乾かす時には電気乾燥機を使わず、太陽の下で乾かしています。また、今抱えている悩みの1つは、石油性の糊の使用をなくして、糊の代わりに圧力を利用した高価な綴じ機を使うようになったため、手仕事で綴じ作業を担当していた20人が仕事を失ったことです。そこで、彼らには他の仕事を割り振らなくてはならず、団体全体で注文を増やす必要が生じました。
紙の生産には、ロクタの樹皮を利用しています。ネパールでは伝統的な紙の製法です。ロクタの木を持続可能なかたちで利用し、再植林を確実に行うため、ゲット・ペーパーでは、 「樹木組織培養苗床センター」をスタートさせ、ロクタの苗木を育てて紙を生産している村々に配っています。ここで育てられた苗木は、品種改良の結果、従来の品種が高地の山の斜面を守るように生えていたのに比べて、標高6,000フィート(約1,800m)程度の標高でもよく育ちます。取引先からは、ゲット・ペーパーが社会的な面と同様に環境的な面でも主導的な取り組みを進めるよう求められています。そのため、この苗木の育成プログラムについても、昨年、200人の女子生徒を対象に奨学金を提供したというニュースと同じくらい高く評価されています。
「手工芸生産者連盟(ACP) 」では、主にウールやコットンなど、使用後は土に還る天然素材を手工芸品の原料とし、一方では中古デニムの再利用についても実用化に向けて調査をすすめています。最近獲得した助成金のおかげで、仕事場と手織り布の染め仕上げ作業所の改築、排水・廃棄物処理場、染色試験室、雨水収集施設などが整いました。それによって、年間の水消費量を300,000リットル、約20%も削減することができました。
「私たちはネパール最大のフェアトレード団体で、250人の手織り職人をサポートしています。オーガニック・コットンを原料として使うことには大変関心があり、需要があることも知っています。同時に、オーガニックの羊毛も輸入したいと考えています。」
メーラさんは、電気やディーゼルのような基本的な動力すら入手しにくい国で、オーガニックのコットンやウールを原材料とすることがどんなに大変かを話してくれました。
「私たちは、商業ベースのバイヤーにも、フェトレードの取引先と同様に自然染料を使った商品を輸出しています。最近、環境保護に対する関心が急速に高まっていることを本当に実感しています。たとえば、ACPには100人以上の従業員が昼食をとる食堂があります。そこで出た生ゴミはすべて堆肥にして、近所の人たちに分けています。またカトマンズの直営店では、ポリ袋ではなく、紙や布のバッグを使うようにしています」とメーラは続けました。
ネパールのように政治的に不安定で、電気、灯油、きれいな水などの生活必需品の入手が困難な状況の中、市民も企業も大きな犠牲を払わされているような国でも、消費者の環境問題への関心を強みとして生かし、すでに実践されている環境にやさしい行動をさらに大きく展開することができるのでしょうか?環境問題に対応する素晴らしい実践の成果が、輝かしい例としてもっと注目を集め、そうした流れの中、ネパールのフェアトレード団体による製品がもっと手に入りやすくなるだろうと期待できます。社会問題、そして環境問題の実践に関してまさに今、ビジョンを持った指導者が必要とされているのです。
ネパールのフェアトレードグループを代表して取材に応じてくださった上記フェアトレード団体の皆さん、意見交換に貢献してくださったサナ・ハスタカラ、マハグティ 、クムベシュワール職業センター のみなさま、ありがとうございました。
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